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震える舌(1980年製作の映画)上映時間:114分

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評価【★★★☆☆】3.8/5点満点中

監督
 野村芳太郎
脚本
 井手雅人
出演者
 渡瀬恒彦
 十朱幸代
 中野良子
 若命真裕子  他…

 

あらすじ

 郊外の団地に三好昭と妻の邦江、娘の昌子の三人家族は住んでいた。その付近には、まだ葦の繁みがあり、ある日昌子は湿地の泥の中を蝶を追って捕虫網をふりまわしていた。数日後、母の邦江は昌子の小さな異常に気づいた。食事中、昌子は食物をポロポロこぼし、トイレに立った後姿は鵞鳥のような歩き方をしている。風邪かなと邦江は心配したが、その直後に昌子は絶叫をあげて倒れる・・・。

フィルマークスよりあらすじ抜粋

filmarks.com

総評

 そんじょそこらのホラー映画よりも恐ろしかったかもしれません。監督は野村芳太郎で、代表作には他に「砂の器」があります。本作も「砂の器」と同様にクラシック音楽が効果的に使用されています。バッハの【無伴奏チェロ組曲】の美しい調べが流れる中で幼い少女が破傷風菌に感染していきます。

 落ち着けるのはラスト10分くらいで、あとは延々と少女が苦しみもがき、絶叫をあげ、口から血を流し、夫婦はただただそれに振り回されていくというのをじっくりとそれはもうじっくりと描いています。それだけに、渡瀬恒彦、十朱幸代演じる夫婦の気持ちが嫌というほど伝わってきます。何もできず病状が悪化する娘を前に遂には娘が助かることを諦めてしまう。そこにこそ本当の恐怖が映し出されています。追い詰められた夫が「もし昌子が死んでも、次の子は産まない」と悲劇的な誓いをするシーンは視聴者の心を抉ってきます。

 それだけ苦しいところを延々と見せられただけに、呼吸器を外された娘の絞り出すかのような「チョコパンが食べたい」からの「チョコパンだよー!」という叫びにはこちらもやっとのことで笑顔になり、劇中の夫婦同様泣き笑いしてしまいました。その直後のジュースを買いに無我夢中で走る渡瀬恒彦も最高の演出です。

 総じて破傷風、しかも泥からの感染という現実でも起こりうる恐怖と、それによって家族が、大の大人が崩壊するまでをじっくりと描いています。少女の演技、そして夫婦の演技どちらも素晴らしくこちらの心に恐怖を植え付けてきます。最後の10分間が救いです。10月31日までAmazonプライムで視聴可能です。(2022年現在)ぜひご鑑賞下さい。