ザ・メニュー(2022年製作の映画)上映時間:106分
評価【★★★★☆】4.0/5点満点中
監督
マーク・マイロッド
脚本
セス・リース
ウィル・トレイシー
出演者
レイフ・ファインズ
アニャ・テイラー=ジョイ
ニコラス・ホルト 他…
あらすじ
太平洋岸の孤島を訪れたカップルのマーゴとタイラー。お目当ては、なかなか予約の取れない有名シェフ、ジュリアン・スローヴィクが振る舞う、極上のメニューの数々。「ちょっと感動しちゃって」と、目にも舌にも麗しい、料理の数々に涙するタイラーに対し、マーゴが感じたふとした違和感をきっかけにレストランは徐々に不穏な雰囲気に。なんと一つ一つのメニューには想定外の“サプライズ”が添えられていた…。果たして、レストランには、そして極上のコースメニューにはどんな秘密が隠されているのか?そしてミステリアスな超有名シェフの正体とは…?
フィルマークスよりあらすじ抜粋
総評
ネタバレあり感想です。
これほどまでに身につまされる映画は中々ありません。ネットやSNSの影響で我々消費者が批評家の様に作品を批判できる様になって久しいです。(実際私もその一人である訳で)本作はそんな自称○○通にぶっ刺さる映画になっています。
本作はグルメを通して社会を批判するような作品かと思いきや不気味な料理を出しながらのサスペンス、スリラーな映画になり、こちらがそのサスペンスにドギマギしていたと思っていたら主人公のアニャ・テイラー=ジョイがバチコーンと正論を言って本作の雰囲気を一転させ、どこかスッキリとした映画になるというどのジャンルで説明すればよいかが難しい奇作です。
料理とは本来空腹を満たすためにあるもの。それを芸術作品として提供する様になると、作る側も食べる側も本来の意味を忘れ、「これは海を食べている」だの「○○酸がどうの」とうんちくをたれてしまいがちです。(特に権威のある男性が作ったものほどこうなりがちかと。)フルコースで出される料理はどれも美しく、グルメ番組の様にインサートで料理が紹介されます。現実の我々も権威のある人が作った作品などは良く味わいもせず、「この撮影の角度が良かった」「この演出はこの人にしかできない」等の言葉と共に賞賛してしまいがちです。しかし何よりもおいしそうだったのはチーズバーガーでしょう。そのチーズバーガーを注文された時のレイフ・ファインズの表情と言ったら…。今作随一のスカッとするシーンですし、我々観客をハッとさせるシーンでもあります。
総じてジャンル映画とひとくくりにするのには難しい作品ですが、一言で表現するとすれば、「女性映画」といえるでしょう。権威のある男性の下で強制的に従わされるレストランのルールに対して、真向から批判する(アニャ・テイラー=ジョイの目力も相まって)パワーのある作品になっています。ふとした時に見返したくなるとてもいじわるで絶品です。