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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)上映時間:112分

公式サイトはこちら

評価【★★★★☆】4.3/5点満点中

監督
 シアン・ヘダー
脚本
 シアン・ヘダー
出演者
 エミリア・ジョーンズ
 トロイ・コッツァ
 マーリー・マトリン  他…

 

あらすじ

 とある海辺の町。耳の不自由な家族の中で唯一耳が聞こえる女子高生のルビーは、幼少期からさまざまな場面で家族のコミュニケーションを手助けし、家業の漁業も毎日手伝っていた。新学期、彼女はひそかに憧れる同級生のマイルズと同じ合唱クラブに入り、顧問の教師から歌の才能を見いだされる。名門音楽大学の受験を勧められるルビーだったが、彼女の歌声が聞こえない両親から反対されてしまう。ルビーは夢を追うよりも家族を支えることを決めるが、あるとき父が思いがけず娘の才能に気付く。

総評

 日本の配給会社による「コーダ、最高だ」のキャッチフレーズにはげっそりしましたが、映画の出来は最高でした。

 2014年のフランス映画「エール!」のハリウッドリメイク版で、シアン・ヘダー監督の作品。タイトルの”CODA”は、「Child of Deaf Adults」、ろう者の親を持つ聴覚者の子供を指します。

 障害者をテーマにした映画は、いわゆる”感動ポルノ”という要素が強まってしまい、障害であることを悲劇かの様に描くことが多いのですが、本作は手話のリズミカルな表現がプラスに働いており、手話でしか味わえない感覚を堪能することができます。また、家族4人のうち、3人がろう者であることで、一人に障害が集中しないので暗くなりすぎない良さがあります。

 設定がろう者であることを除けば本作のテーマは少女が家族から旅立つという普遍的なものになっています。家族の中でも象徴的だったのが、母親とルビーの会話シーン、ルビーが母に「私がろう者の方がよかったか」と聞いた時の答えがうれしかったという回答ではなく「分かり合えないと思い悲しくなった」と答えます。確かにもし自分がろう者だとしたら、同じことを思うかもしれない。と考えさせられる印象的なシーンでした。

 また音楽の先生との師弟関係も本作を語るのには欠かせない要素でした。やや毒舌で癖の強い教師ながらも、主人公の才能を見抜き、鍛え上げていきます。歌うとどんな気持ちになる?と聞かれ、言葉にできないルビーが手話で表現し、鍛える事を決意するシーンはグッときますし、自分を解き放てと叱咤させるシーンなど先生とのやり取りのシーンは主人公の変わるきっかけづくりをしているので軒並み良いですね。

 終盤の合唱シーンで観客に歌を聴かせて感動させるかと思いきや、まさかの無音という演出に心を打たれました。そしてそれと同時に親って子供が何で評価されているかわからない時ってあるよね、普遍的だよねと思わされます。だからこそこのシーンの後に来る父親の前で歌うシーンや音楽大学の受験シーンで家族が娘の才能を信じ、応援する流れの感動が大きなものに変わっていきます。

 総じて手話のリズミカルな表現に羨ましさすら覚え、ポジティブに描いておりそれだけでなく、ある少女の成長譚としての完成度も高い一作になっています。ぜひご鑑賞ください。