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つみきのいえ(2008年製作の映画)上映時間:12分

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評価【★★★★☆】4.0/5点満点中

 

監督
 加藤久仁生
脚本
 平田研也
ナレーション
 長澤まさみ

 

あらすじ

 水に沈んでいく町を背景に、積み木の様に積み上げた家に独り住む老人がいた。

ある日老人はパイプを海中に落としてしまう。お気に入りのパイプを拾う為老人はダイビングスーツを着て、かつて住んでいた自分の家を潜っていく…。

総評

 アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した初の日本映画。鉛筆の質感により温かみをどこか感じさせる本作、本作の肝は水面が上昇することによる地球温暖化への警鐘という説教じみたことではなく、水面の上昇はあくまで舞台装置に過ぎません。

 本作の特徴ともいえる積みあがった家は、確かに特異なものの様に見えますが、自分たちの人生を積み上げていったらこんな形になるだろうという想像を働かせると、ごくありふれた人生そのものを象徴していることが分かります。そして積み上げてきた人生をふと振り返るときがやってくる。それがこの映画で語られているテーマです。

 幼少期から、青年、大人に変わっていき大切な人と過ごした大事な時間を下へと潜っていくことで振り返ることで、観ている観客も人生を振り返ることができ、徐々に引き込まれていきます。最後は最初の家で拾い上げたワイングラスで、一人で乾杯ししんみりと終わらせる。こちらもゆったりと乾杯したくなるようなエンディングです。

 総じて12分という短編で、鉛筆で書き上げられた本作。終末的な世界観ながらも終始穏やかな気持ちで見ることができるのは、ありふれた人生の出来事を凝縮して、まるでアルバムかの様に見せているからでしょう。それが見ているこちらのアルバムと重なり、本作の感動を押し上げています。おすすめです。